DXとは何か
巷ではDXが流行り「我が社もDXに力を入れよう」という鶴の一声から「とりあえずクラウド化して」なんて言われた人も多いのではないでしょうか。ここ数年でDX関連のイベント、DXと名のつく部署などをよく耳にするようになりました。
そもそもDXとは何でしょうか。
直訳すると「デジタル変革」ですが、確認する限り企業や人によりその理解は異なります。Gartnerは以下のように説明しています。
Gartner: “Digital transformation can refer to anything from IT modernization (for example, cloud computing), to digital optimization, to the invention of new digital business models.”
「デジタルトランスフォーメーションとはITの近代化(クラウドコンピューティングなど)からデジタル最適化、新しいデジタルビジネスモデルの発明まで、あらゆるものを指します」
私なりに解釈をすると、DXは単純に業務をデジタル化していくことが目的ではなく、その先にあるビジネスや生活をより良いものにするためにデジタル化を活用していくことであると考えます。
DXのメリット
DXのメリットは多岐に渡りますが、ここでは3つの項目を取り上げます。
生産性の向上
業務をデジタル化することにより、工数を削減し生産性の向上につながります。さらに市場の変化や新しい技術を手軽に取り入れることができるため、流動的な変化にも対応できるようになります。
コスト削減
例えば会社で抱えていたオンプレミスのシステムをクラウドに乗り換えるとメンテナンスコストや人的コストというのは大幅に削減できます。
リスク軽減
基幹システムやサービスをオンプレミスからクラウドに移行することにより、分散化できるため災害や障害が発生した場合でも業務やサービスを停止せず継続できます。
DXはコスト削減に繋がるのか
前述したメリットのうち、今回はコスト削減にフォーカスして考えてみたいと思います。DXを推進しシステム化することにより、実際にコストは削減されるのでしょうか。
想定される削減できるであろうコストを挙げてみます。
人件費
それまで手作業で行なっていた作業をシステム化し、作業時間が短縮されたり、作業に必要な人数が減ると、その作業にかかっていた人件費は削減されることになります。
諸経費
業務のほとんどがオンラインで完結できるようになり、テレワークがメインとなると、オフィスが縮小されたり、賃料の安い郊外に移ることが可能となります。賃料が安くなるほかに、広いオフィスが不要になったことにより光熱費が下がったり、従業員に支払っていた交通費も不要となります。
システム費用
自社のシステムをオンプレミスからクラウドに移行する場合、オンプレミスだと一番負荷がかかる状況を想定し、ある程度の規模や容量を確保しておく必要があります。その点クラウドを活用すれば、自動でスケールアウトする仕組みを生かしてその時々でリソースを必要な分だけ利用し、利用した金額のみを支払うことでコスト削減に繋がります。
人件費・諸経費・システムの費用が削減できれば大幅なコスト削減につながりそうですが、そううまくいくものでしょうか。実際は次のようなリスクもあると考えられます。
人件費
人手で行なっていた業務をシステム化したとしても、結局は確認や登録作業が必要であるケース、作業時間が減らせると思って導入したシステムでも機能が多すぎて使いこなせない、契約はしたけれども業務の切り替えがスムーズに進まないケースなどがあります。そうなると人件費は変わらず、追加でシステムの費用もかかることとなり、結果としてコスト削減ができていない状況に陥ります。システム化をすることは一時的に現場の担当者には負担がかかることがあるため、その分の工数を見積もった上で導入時期と移行の計画を立てる必要があります。
諸経費
テレワークが進めば賃料・光熱費・交通費といった内容に関しては削減されます。ですが、オンラインでのコミュニケーションにより確認に余計な時間がかかったり、意思疎通がうまくいかないなどのコミュニケーションコストがかかる場合があります。目に見えにくいコストですが、その分業務の進みが遅くなることがあるため注意が必要です。
システム費用
システム費用の削減というと広義ですが、上述した自社システムをオンプレミスからクラウドへ移行する場合を想定したリスクを記載します。クラウドは利用した分のみを支払う、従量課金の料金形態が主流です。うまく活用すると余分な費用を支払わずに済みますが、Web上の数クリックでリソースの利用が開始できてしまうため、利用していないリソースをそのまま放置してしまったり、誰が何を使ったかという管理が煩雑になりやすい傾向にあります。こういった事態を防ぐために権限を絞ったり、アカウントやリソースの管理を徹底する仕組み作りが必要となります。
DXでコスト削減を実現するために
ではDXでコスト削減を実現するにはどうすれば良いでしょうか。企業の規模や組織編成、環境によって異なってくるため一概には言えませんが、アルファスではステップごとに以下のポイントを心がけることで効果が出しやすくなると考えます。
1. 優先すべき箇所を洗い出す
何かを変えるということは、少なからずその変化による負担も発生します。全てを一度に行うのではなく、DXにより改善したい項目を洗い出し、優先順位をつけましょう。効率化やコスト削減できるものに関してはどの程度の効果が見込まれるのかも見積もり、効果の大きいものから順番に着手するようにしましょう。
2. 目標値を決める
コストが低ければ低いほど良い、というのは本来のDXによるコスト削減からはかけ離れています。あくまでビジネスや環境をより良くし、健全な成長をできる中でのコストの削減が目標であるためどの程度の効率化・コスト削減を実現するかは定量的に目標をたてましょう。
3. 人を巻き込む
チームや関係部署を巻き込めるかどうかでその効果は大きく変わってきます。コスト削減は企業にとってのメリットとなりがちですが、例えばリモートワークが推進されれば通勤時間の無駄がなくなり、その分の時間を有効活用できるようになります。マニュアル作業がシステム化されることにより人的ミスを減らすことができれば、「ミスをしたらどうしよう」という精神的な苦痛を軽減することができます。このように自分にとってどのようなメリットがあるかを理解してもらい、ポジティブな印象を持ってもらうことで推進力が大きく変わります。
4. 効果測定を行う
システム化をしたことにより目標としていた効果が得られたのかどうかは課題ごとに確認をしましょう。効果が出たケース、出なかったケースでの特徴やどういった違いがあったかを認識することでその後の取り組みに役立てることができます。
まとめ
システム化して実際にそのメリットを享受できるかは一概には言えず、その活用方法と管理次第だと考えます。DXは一箇所改善して終わり、という訳ではなく、時代の変化や環境に伴い常に最適解が変わっていくものです。DXが流行りの今、システム移行・運用を効率化するためのサービスというのはどんどん増えてきています。また、DXで成果を出した企業の事例やセミナー、DX関連のコミュニティなども増えてきているため、それらを活用してDXを推進する中で、そのメリットの一つでもあるコスト削減を実現しましょう。
参考文献
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