本記事は、Rippleをご利用のMSPやクラウド再販事業者(以下、MSP)の皆さまに向けて、スマート予約割引サービス(以下、スマ割)を使って、お客様にどのような価値を届けられるかを紹介します。
「利用量が減ったら、どうなるの?」
AWSのリザーブドインスタンス(RI)やSavings Plans(SP)(以下、正規予約割引)を提案すると、お客様からまず返ってくるのがこの質問です。
AWSには主に3つの支払い方法があります。オンデマンド、1年契約、3年契約です。オンデマンドは柔軟ですが、割引はありません。正規予約割引は大きくコストを下げられますが、契約期間に縛られ、利用量が減っても使わなくなった分の支払いが続きます。そのため多くのお客様は、利用量の一部だけを予約し、残りをオンデマンド料金のまま支払っています。
スマ割は、この隙間を埋めるサービスです。正規予約割引に返金の仕組みを組み合わせることで、お客様は予約割引のメリットを受けながら、予約した分が使われずに無駄になってしまうリスクを抑えられます。
MSPは、スマ割をRippleとWaveを通じて提供できます。Rippleでお客様ごとにスマ割を有効にすると、お客様はWave上で自社の利用に合ったプランを確認し、そのまま購入し、プランごとの削減額を確認できます。提案の裏付けとなるのはお客様自身のデータなので、MSPが一件ずつ予約割引を代わりに購入することなく、お客様のクラウドコスト削減を後押しできます。
スマ割のプランと提案の仕方
スマ割の各プランには、30日や1年といった最低利用期間があり、その期間中は解約・返金はできません。最低利用期間を過ぎたあと、予約割引の適用量(予約割引が適用された利用量)が減り、その月の予約割引のコストが、その適用量をオンデマンドで支払った場合の金額を上回ったときは、その差額が返金されます。利用量が減った場合だけでなく、割引共有の設定漏れやインスタンスタイプの違いなどで割引が適用されなかった場合も、返金の対象です。また、30日プランは月単位で更新され、翌月以降はいつでも解約できます。解約の対象は返金の仕組み(スマート予約利用料)だけで、裏側の正規予約割引はそのまま残ります。
利用にはスマート予約利用料がかかります。これはお客様が実際に得た削減額の一部で、純粋な削減がなかった月には請求されません。期間が短いほど料率は高くなるため、30日プランは柔軟性を、1年プランはより大きな割引を重視した設計です。前払いは標準では不要で、一部の対象サービスでのみ一部前払いを選べます。どちらも購入前にプランの詳細で確認できます。

スマ割は、正規予約割引を置き換えるものではありません。ワークロードの安定度に合わせて組み合わせを提案することで、お客様は割引と柔軟性を両立できます。
パターン1:利用が安定しているお客様
対象となる利用量のうち、長期的に使い続けることが確実な約5割を、最も割引率の高い正規予約割引の3年契約でまかない、残りをスマ割で埋めます。例えば、約3割を1年プラン、約2割を30日プランにするイメージです。安定した部分では最大の割引を受け、変動しうる部分は柔軟性を保てます。

パターン2:利用の変動が大きいお客様
3年の正規予約割引は使わず、対象となる利用量の約2割を1年プラン、残りの約8割を30日プランでまかないます。利用量が読みにくい場合でも、柔軟性を保ちながら割引を受けられます。

スマ割の裏側では、お客様自身のAWS Organizations内の専用アカウントで、正規予約割引が実際に購入されています。返金の仕組みは、その上に付いているものです。そのため、たとえば新しいサービスを立ち上げたばかりで利用量が読めないうちは、まず30日プランで始めます。その後、利用が安定して今後も使い続けることが確実になったら、返金の仕組みだけを外して、そのまま正規予約割引として使い続けられます。スマート予約利用料がかからなくなるぶん、より大きな割引を受けられます。ただし、外したあとは通常の正規予約割引と同じく、残りの契約期間の支払いが続きます。
実際の利用に合った配分は、Waveのレコメンドをお客様と一緒に確認しながら決めていきます。
MSPはRipple、お客様はWave
財務的なリスクが下がっても、予約割引の運用がなくなるわけではありません。購入の計画、購入、ルールづくり、購入後の確認は、誰かが担う必要があります。その多くはMSPが担っており、日本では、今もExcelや分断されたツールで手作業で管理しているケースが少なくありません。
RippleとWaveは、この業務を分担します。MSPはRippleで、すべてのお客様のスマ割をまとめて管理します。お客様はWaveで、自社のプランを比較・購入し、購入後の状況を確認します。
つまり、全体を管理して助言するのはMSP、判断するのはお客様です。また、お客様がWave経由でスマ割を購入するたびに、MSPにも収益が生まれます。
なお、Rippleの請求管理はAWS、Microsoft Azure、Google Cloudに対応していますが、スマ割の対象は現在、AWSのRIとSPのみです。Microsoft AzureとGoogle Cloudにも、順次対応していく予定です。以下はAWSでの利用を前提に説明します。
Rippleで、すべてのお客様の予約割引を一元管理
Rippleは、MSPがお客様の請求を一か所で管理するためのプラットフォームです。スマート予約割引管理は、この仕組みを予約割引の管理にまで広げる機能です。
お客様の請求グループごとにサービスを有効・無効に切り替え、どのお客様にスマ割を提供するかを決められます。各お客様の支払いアカウントと設定状況を確認できるほか、すべてのお客様の月次の削減額をレポートでまとめて確認したり、各お客様のWaveの画面を開いて購入内容を確認したりできます。
また、Rippleでプランを作成し、システムのレコメンドを補うこともできます。最低利用期間はMSPが設定でき、作成したプランはすぐにお客様のWaveのレコメンドに表示されます。お客様の利用状況に合わせたプランを用意できるため、MSPならではの提案につながります。

Waveのレコメンドで、根拠のある購入判断を
MSPがRippleでスマ割を有効にすると、お客様はWaveのレコメンドで、スマ割のおすすめプランと、MSPが作成したプランを確認できるようになります。
レコメンド機能は、連携済みのCUR (Cost and Usage Report) )から現在のクラウド利用量と契約中の予約割引を読み取り、プランを提案します。各レコメンドでは、月間の削減見込み額、想定適用率(対象となる利用量のうち、そのプランが適用される割合)、必要な利用期間、損益分岐点までの日数、選択できるプランを確認できます。お客様は購入前に費用対効果と自社の利用への適合度を判断でき、MSPも同じ数字をもとに助言できます。


Waveのポートフォリオで、購入後も状況を把握
予約割引の管理は、購入して終わりではありません。クラウドの利用状況は時間とともに変わるため、購入したプランが今も実際の使い方に合っているかを確認し続ける必要があります。
Waveのスマート予約割引ポートフォリオには、お客様が購入したスマ割が一覧で表示されます。プランごとに、使用状況の推移、月間コスト、月間削減額に加え、有効期限、支払い方法、インスタンスタイプなどの詳細を確認できます。ここでいう使用状況は、購入した分がどれだけ実際に使われているかを示す指標で、レコメンドに表示される適用率とは別のものです。使用状況が下がり始めたときや、有効期限が近づいたときは、お客様と一緒にレコメンドを確認し、更新を検討しましょう。

データは日次で更新されるため、お客様は定期的な請求レポートを待つ必要がなく、MSPも手作業でレポートを作る手間が減ります。
運用の手間から、お客様と一緒に考える戦略へ
この仕組みの価値は、コストを下げることだけではありません。予測に頼っていた予約割引の判断を、MSPとお客様が理解し、繰り返し使える方法に変えることにあります。
MSPの役割も変わります。お客様が自分でデータを確かめて購入できるため、MSPが一件ずつ購入を代行する必要はなくなり、事務作業が減ります。そのぶん、「購入の代行役」から「お客様の戦略を支えるアドバイザー」として、どのプランをどう組み合わせるかという相談に時間を使えるようになります。
この透明性は、MSPの価値を下げるものではありません。その積み重ねがお客様からの信頼につながり、一回ごとの取引を長く続くパートナーシップへと変えていきます。
FinOpsが成熟するにつれて、パートナーに問われるのは削減額の大きさだけではなくなります。その削減額を、どれだけはっきり示し、説明し、納得してもらえるか。これからは「信じてください」ではなく、「一緒に確かめましょう」と言える関係が選ばれていきます。
はじめ方
はじめ方は3ステップです。Rippleのスマート予約割引管理で、お客様の支払いアカウントを接続し、請求グループごとにスマ割を有効にし、Waveのユーザーにアクセスを付与します。詳しい手順は、以下のガイドをご覧ください。


